『魔法使いの約束』を読みました

2周年の全章開放キャンペーンに乗っかって、オート再生で食事中に毎日少しずつまほやくのメインストーリーを読んでおりました。おもしろかったです!

メインストーリー感想

正しく女性向けと言えばいいのか、子どものころに読んだ少女小説のように繊細で美しい世界観でした。
作品に引き込んでくれる自分にとってのフックを感じ取るまでは結構かかったのですが、キャラクター同士の掛け合いがテンポもセンスも良かったこと、一区切りごとの文章量がそう多くないこと、フルボイス+オート再生の食事中のおとも性能が高すぎたこともあり、楽しく読み進められました。

私はスマホゲームで長いお話を読むことはわりと苦手なほうなのですが、本当に読みやすかったな。
地の文=賢者の一人称視点にすることで、セリフのみではわからないところを補いつつ、逆に地の文が占める割合が小説に近い量になることもなく、スマホゲームで使われることに最大限配慮されたテキストだと感じました。

前述の作品に引き込んでくれるフック、私の場合は『劇的ではない寂しさ』の表現がものすごく上手い…と感じたことでした。
劇的な寂しさは、たとえば昨日大切な人が亡くなったとか、ある意味ドラマチックで、現代日本で暮らしていると日常的に繰り返し向き合うわけではない寂しさ。劇的ではない寂しさは、理由もなくていい、日常のなかに溶け込んでいて、わざわざそのたびに落ち込んだりはしないけれど拭いきれないような寂しさ。

まほやくのテキスト、そういう寂しさにも文章という形を与えて視認できるようにして、作中のキャラクターたちがそれを噛み締めたり目をそらしたり、だから向き合おうとしたりすれ違ったりする姿を、読んでいるこちらにとって”他人事”にしない力がおそろしく強い。彼らの物語は私たちのものでもあると感じさせる力、と書けばいいのでしょうか。ファンタジーな世界観なのに決して遠すぎない、でも直視できないほど近付いてもこない。それが私がこの物語を優しくて上手いと感じた理由だと思います。
後半は一転してそういう”力”に慄きながら読んでいました。楽しかったです。

具体的に書くと、私が「このお話おもしろいな…?」と気付いたのはミスラのおかげでした。
ミスラはいつも気怠げですが魔力が強くて横暴で、他の北の魔法使いたちとあわせて自由に勝手気ままに生きている印象が強く、決してつねに悲壮感を漂わせた人物ではありません。ミスラはチレッタという大切な相手を亡くした経験がありますが、彼女が人間の男性と家庭を持ってからは離れて暮らしていたこともあってか、どことなくチレッタの死はミスラのなかで実感をともなっていないような印象を受けました。実感がともなわないから感情的に泣き叫ぶようなことはないけれど、振り切ることも受け入れられることもない。ミスラのどこかぼんやりおっとりした性格とも重なるような気がします。
チレッタの忘れ形見にあたるルチルとミチルを前にすると、さすがのミスラも懐かしさと同時にチレッタの不在を認識せずにはいられないようで、「もうあなたがいないなんて信じられない」と独り言を零します。
ここのリアルさというか、ミスラのぼんやりとした寂しさの質感や重みまでも、まるで触れたようにはっきりと伝わってきて、前述の『彼らの物語は~』の感想に至りました。私にはミスラの感情が”寂しい”だとわかるのに、物語のなかのミスラは自覚できていない様子なのも、なんともいえず庇護欲をくすぐられるというか…。
 

メインストーリーを読み終わったあとに、こちらも読みました。

「誰にも理解されない、どれだけそばに相手がいてくれたとしても自分は孤独だと思える要素を、賢者含めて魔法使い全員に付けていて、だけど孤独に対して否定的に書きすぎないようにも気を遣っています。」

「孤独からの抜け出し方の提示ができればという気持ちもあるし、同時に孤独を肯定的に受け入れるという描写もできればいいなと思っています。」

【インタビュー】現実世界を強く生きられるような物語を――『魔法使いの約束』都志見文太の創作論 – ライブドアニュース

これこれこれ。まさにこれが好きだな…と感じたところでした。
『これは私のための物語だ』と思わせる力、パワーというか知力と計算なんだ…。

キャラクターまわり感想

私はソシャカスでまほやくは今をときめく女性向けソシャゲなので以前から話題を見かけたことはあって、メインストーリー全章開放と聞いたときにじゃあ読んでみようかなとなったのは、サンリオコラボでポムポムプリンと喋っているオズとアーサーのスクショがかわいくて印象に残っていたからでした。
そのサンリオコラボは鍵でも開けられないんだ!?と残念でしたが、オズとアーサーの関係はやはりかわいかったです。
 

あと私も絶対にいっぱいいる『まほやくを触ったことはないけどフィガロだけはなんか知ってるって人』でしたし、仮面系男子(ここでは物理的な仮面ではなく、陽気だったり軽薄だったりする表向きの顔の下に、冷めた一面や寂しい感情を隠している男性キャラクターのことを指す)に幼少のみぎりから激弱だったため、そういう男のにおいをある程度嗅ぎ分けられる嗅覚が身に着いており、それがフィガロにガンガンに反応していたので実際に読んで見極めたかった気持ちもあります。読んだ感想としては激臭でした。

メインストーリーを読むだけの予定だったくせに、プロローグでいきなりやり直しできるSSR一枚確定チュートリアルガチャがはじまったので、悲しきソシャカスの性(さが)がうずいてしまい、『SSRフィガロとSRオーエン』or『SSRオーエンとSRフィガロ』の状態を作るまで半日リセマラを粘るはめになりました。変な方向に真面目か?
オーエン、なんか本能が放っておけなかったので…。リセマラは結局『SSRフィガロとSRオーエン』でクリアしましたが、メインストーリーを読み終わる頃には案の定オーエンがめちゃくちゃに気になっていたのでやっぱり本能的な直感はすごい。

オーエンが単体で気になったというよりは、オーエンがカインにヤバ粘着しているのがおもしろすぎて…。このふたり私の好きな(フィクションの)加害者と被害者じゃん!!!????!!!?!?と気付いたら抗えませんでした。

あとはやっぱりミスラが好きです。この作品面白いな!?と思わせてくれた、きっかけのキャラクターのことはずっと好きなので。
北の国の魔法使いたち、みんなネコチャン成分が強くてかわいい。魔法使いはみんなネコチャンでしょうけれど。
北の練習着、深夜のドンキ(この世の終わりの地)にいそうで、北のヤバさが肌にビリビリ伝わってきますよ。
 

1周年復刻はイベント参加してみようかな~と思う前に終わってしまっていましたが、2周年ストーリーは回収しておいたのでまたそのうち読みます。
ほんと面白かったな、魔法使いの約束…。久しぶりにものすごい作品パワーを浴びました。